細くとも永い お付き合い

90円の切手を貼って
昔、と言っていいほどの時間が経ちましたがイタリアへご一緒したIさんから切手を90円貼って封書が届きました。年賀状だけの消息で一度倉敷でお会いしたことのあるIさんです。

 ローマの終着駅を前にした店主が「テルミナル駅」とつぶやいたそうです。(店主は全く覚えてない)そのときIさんは勝手に『塩出さんはきっと映画もお好きなロマンチストなんだ、そして昔見たイタリア映画「終着駅」のシーンを思い浮かべておられる……』想いは同伴しその後もあの日をふと思い出すことしばしば。とあります。これは前置きで本題は久世光彦著「マイ・ラストソング=最終章」に載っている「侍ニッポン」のことでした。山の手育ちの、お勉強もよくできる東大出の才人でさえも「好きだ」と言っている、ミーハーな私はうれしくなり、長年の胸の仕えも消えましたと続きます。「数分後あんたの死が迫ったら最後に聴きたい一曲は何?」という構成シリーズ。その本を最近読まれて歳も似通った店主を思い出してくれたようです。幼少時のIさんは東映のスター東千代介出演「侍ニッポン」の歌にはまり現在にいたったのでした。
 手紙と同封してくれた「侍ニッポン」と「カスバの女」のコピー あまりの面白さに一気に読みました。ご一緒した旅行中、Iさんは物静かな紳士で写真ではなくスケッチで記録されていました。今はリタイアされてこんな楽しい手紙を送ってくださるのです。